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小 説
旧日の縁(上) (ふるきひのえにし・上) -2001年 A5,156頁(小説)
様々の出逢いがあり、そこから友となり、また敵を得る。それぞれの道を選びながらも、四人は彼らだけが解する不思議な「つながり」をいつも自覚した。
その源泉に位置する一人の老人。二人の少女の祖父、著名な画家、四堂 兆。彼らに巨大な影響を与え続けた天才は、彼らの成長にかえって自らの老いを見出す。自身に対する漠然とした不安、そして彼らに対する期待と懸念、信頼と畏れ。彼は語った。
「我が才は雅に。我が技は匠に。我が志は政宗に。我が夢は三四郎に」
「そして、…。我が、秘密は――」
唐突に訪れる早すぎた春の別れは、新しくも旧い邂逅に彼らを導く。
『枳の庭』から続くシリーズ二作目。
起承転結の承に当り、その上巻。
内容は高校に上がった主人公達4人に、新キャラを加えて巻き起こる交錯した人間模様。
互いに色々な思いがあり、事件があったり、すれ違いがあったり、喧嘩があったり。
そんな中、物語での最大の分岐点が・・・
「そして彼女は、見たのである。
この地上で最も見たくはなかったものを。」
今作はバトルシーンもあり、なかなか熱いです。
表紙の潔白さに心惹かれたら、即読んでみて下さい。
下巻が待ちきれなくなりますよ。
* * *
シリーズ全体を見た場合、前作「枳の庭」は物語全体の導入、序章に当たるだろう。
主人公達がどういった人物なのか、どういう成長をしてきたのかという所に主眼が置かれていた。
そして、この「旧日の縁(上)」は作品全体に肉付けを行う役割を担っている。
脇役と呼ぶには憚られるような個性を持った人々が様々に絡み合い、作品に深みを持たせる。
個人的には、女性陣それぞれの思慕の念が印象に残った。
そういった人物関係に焦点が当てられているため、物語は大きくは進行しない。
あくまでも静かに”前提”が整えられていくのである。
「禁じられた色彩」という言葉や、「四堂 雅」の意味深な発言が気にかかっている方には、 物足りない内容かもしれない。
しかし、逆に言えば、人間関係を楽しまれる方には、とても面白いという事でもある。
迎えるラストシーンは間違いなく物語の転機であり、要だ。
この時点で今後の展開予想することは難しいが、次巻以降、物語が動き出す事を予感させるには十分だろう。
出来る事ならば、上下巻を続けて読まれる事をお奨めする。
登場人物絵&挿絵(一部)です。クリックで大きくなります。
(注:実際に収録されたものはモノクロ版です)